近年の働き方改革やコロナ禍によるテレワーク推進で働き方の多様化が進んでいます。煩雑化した勤怠管理のために勤怠管理システムの導入を検討している企業は多いのではないでしょうか?
最新の勤怠管理システムには業務フローまで効率化する多彩な機能も備わっていますが、どんな利便性があり、導入の準備や手順には何が必要なのか。担当者としては事前に押さえておきたい情報ですよね。
今回は、勤怠管理システムで業務フローを効率化するメリットや、導入の手順について詳しく解説します。よくある失敗や成功ポイントも合わせてご紹介しますので、お役立てください。
目次
1.勤怠管理システムで業務フローを効率化するメリット
決済までの時間が短縮できる
社外からでも申請・承認・決済ができる
リアルタイムで処理状況が確認できる
書類管理の労力・スペースを軽減
不正や情報漏洩の防止
既存システムとの連携で関連業務も軽減
2.勤怠管理システムの導入手順~準備・選定・契約・周知~
3.勤怠管理システムの導入でよくある失敗
設定漏れで計算ズレが発生する
方法が統一されず正確な運用ができない
導入しても現場意識の問題で法令違反が防げない
法改正に対応できないシステムだった
運用中にシステムのサポートが終了
4.勤怠管理システムの導入を成功させるポイントは業務フローの再確認
5.まとめ
1.勤怠管理システムで業務フローを効率化するメリット
従来の勤怠管理では「社員が申請→上長の承認・決済→担当部署による事務手続き」という業務フローが一般的です。このフローに比べ、勤怠管理システムでは格段に処理速度が上がり、処理作業も効率化できることが大きなメリットといえます。具体的な例をご紹介します。
決済までの時間が短縮できる
勤怠管理システムでは、残業申請や有給申請といったさまざまな申請書類をテンプレート化し、システム上で入力できるようになります。書き漏れを知らせるアラート機能もあるため、書き損じによる二度手間や差し戻しがなくなります。
書類情報はシステムを通じて関係者内で共有できるので次の担当者まで持っていく必要もありません。回覧や差し戻しによるタイムロスを削減し、スピード決済が可能になります。
社外からでも申請・承認・決済ができる
クラウド型の勤怠管理システムを採用すると、社外からアクセスして申請や承認、決済業務が可能になります。テレワークなどさまざまなワークスタイルに対応できるのはもちろん、出張などを理由に申請や決済が滞るケースも減るでしょう。勤務時間外に決済が必要な緊急時でも対応が可能です。
リアルタイムで処理状況が確認できる
業務の進捗状況をリアルタイムで確認できるのも勤怠管理システムの利点です。申請がどこで滞っているのかを一目で把握できるので、各関係者に確認することなく該当の担当者に直接アクションを促せます。
書類管理の労力・スペースを軽減
膨大な書類の管理は管理業務の課題ですが、勤怠管理システムの書類はすべてデータ管理されるためペーパーレス化を実現できます。書類整理の労力が減り保管場所の軽減にも貢献します。
必要書類の検索や集計も容易になり、紙媒体で起こりがちな紛失トラブルや見落としもなくなります。
不正や情報漏洩の防止
書類のデータ化は、印鑑を使った成りすまし承認や第三者による書き換えといった不正防止にもつながります。また、不特定多数の目に触れやすい紙媒体の回覧と比べて、関係者のみが閲覧できるデータは情報漏洩のリスクも大幅に減らすことができます。
既存システムとの連携で関連業務も軽減
勤怠管理システムの多くは給与計算システムとの連携が可能です。勤怠情報と給与計算がデータで自動的に紐づけられれば、残業時間や有給消化の計算などもシステムにゆだねられます。手作業が減ることで人的ミスの防止にも役立つでしょう。
2.勤怠管理システムの導入手順~準備・選定・契約・周知~
すべての従業員の業務や給与に深く関わる勤怠管理システムは、あまり考慮せずに導入してしまうと重大なトラブルを招く危険性もあります。導入は手順を確認して慎重に進めましょう。
勤怠管理システムを導入するときの手順を順番に解説します。
①必要な情報を用意する
まずは、勤怠管理システムの選定や初期設定に必要となる以下の情報を用意します。
- 従業員のプロフィール
- 従業員の雇用形態・勤務条件
- 就業規則
- 組織体系
- 賃金規定(実際のタイムカードと賃金台帳で正確さを要確認)
就業規則や組織体系については現状に適しているかを改めてチェックしましょう。働き方の多様化が進んでいるにも関わらず、就業規則や組織体系が適応できていないとシステム設定時に無理が生じます。
②システム運用に必要な環境を整備する
続いて勤怠管理システムを運用するのに必要な環境を整備していきます。機器まわりと業務フローに分けて準備や確認を進めましょう。
機器関係
- 管理用PC(推奨環境を確認)
- システムに対応できるPCやモバイル(全従業員分)
- 社内と従業員が利用する場所のインターネット環境
管理用PCとして既存PCを利用する場合には、OSのバージョンなどの推奨環境を満たしているか確認が必要です。スマホ利用を検討している場合は利用する従業員分のスマホを用意しましょう。インターネット環境については、セキュリティには十分配慮することが重要です。
業務フローの確認と構築
現状の業務フローを確認して、課題と勤怠管理システムで解決したい点を明確にします。
課題と目的をはっきりさせておくと機能の優先順位を決めやすくなります。また業務フローが複雑化している場合は、この機に見直してシステムで無理なく運用できる業務フローを再構築すると良いでしょう。
③勤怠管理システムの選定
業務フローと解決したい課題が明確になったら、勤怠管理システムを選定します。勤怠管理システムは課題解決という目的に加えて以下の6つの視点で選びましょう。
- 自社の勤務形態に合っているか
- 無理のない打刻方法か
- 社員が使いやすいシステムか
- クラウド型かオンプレミス型か
- サポート体制について(導入後のカスタマイズ、法改正への対応など)
- 無料体験ができるか
勤怠管理システムは多機能さよりも、「誰もが使いやすいシステムになっているか」ということが重要です。使い勝手やカスタマイズ方法など細かく確認しましょう。
また、勤怠管理業務には業務フローや法令の変更がつきものです。長い目で見たサポート体制が充実しているかもチェックポイントです。
④サービスの契約
扱いやすさやカスタマイズ性などを体験した上で問題がなければ、システムのサービス契約を進めます。契約前には、利用規約やプライバシーポリシーを隅々まで確認し、問題点は必ず問い合わせることが大切です。
⑤初期設定をする
システムを導入したら、勤怠管理システムの担当者とサービスの提供会社、社労士などと相談しながら、①の従業員情報や社内規定などを登録する初期設定をしていきます。社内で登録作業が難しい場合は、初期設定まで請け負ってくれるサービス会社を選ぶと便利です。
⑥従業員への操作説明と周知
勤怠管理システムを導入したら、使用する従業員にシステム運用の報告と操作手順の説明を実施します。あらかじめ現場の実情にあわせたマニュアルを用意して行うとスムーズです。また、システムの導入にあわせて就業規則の変更をした場合は必ず周知しましょう。
3.勤怠管理システムの導入でよくある失敗
勤怠管理システムの導入でよくある失敗をご紹介します。先ほどご紹介した手順をふめば対策できる内容がほとんどですが、あせって同じ轍を踏まないように気を付けましょう。
設定漏れで計算ズレが発生する
初期設定を雇用形態や勤怠管理に詳しくない人が実施した場合は、設定漏れで計算にズレが発生することがあります。初期設定は普段から勤怠管理を行っている詳しい担当者が責任をもって行いましょう。サービス提供会社や社労士に相談しながら行うとより安心です。
方法が統一されず正確な運用ができない
システムの導入に伴って業務フローが変更されたにもかかわらず、周知の不十分さが原因で正確な勤怠管理ができなくなるケースもあります。運用前に周知期間を確保し、すべての社員が操作手順を理解できるように努めましょう。
導入しても現場意識の問題で法令違反が防げない
ほとんどの勤怠管理システムには、残業時間や残業上限人数がオーバーすると知らせるアラート機能が備わっていますが、現場管理者の労働法に対する意識が低いと、せっかくのアラートも意味をなさず、法令違反を防げません。勤怠管理システムに頼るだけではなく管理者の法令遵守教育を行うことも大切です。
法改正に対応できないシステムだった
導入したシステムが法改正に対応できず、再導入や再設定になってしまったというのもよく聞く話です。システムの導入時には法改正時のアップデートの可否や、その際の費用負担まで細かくチェックしておきましょう。
運用中にシステムのサポートが終了
早い時期にリリースされていたシステムの場合、運用中にサポートが終了してしまうケースもあります。サポートが終了すると、サービスが使えなくなる、トラブル時のプログラム改修が行われないといったリスクがあります。
また最新のセキュリティ対策が得られないため情報漏洩のリスクも高まります。導入時には今後長期的なサポートが受けられるのか、十分確認しておきましょう。
4.勤怠管理システムの導入を成功させるポイントは業務フローの再確認
勤怠管理システムの導入を成功させるポイントは、現在の業務フローをすべて洗い出して確認することです。
承認ルートが複数ある、店舗や支店、部署ごとに業務フローのローカルルールがあるなど複雑な場合は、システムでは対応できないこともあります。そのため、まずは勤怠管理システムを導入する予定のすべての場所で、どのように勤怠管理されているのかをチェックする必要があるのです。
そのうえで優先順位をつけ、妥協点を探すなどして、業務フローを再構築したうえで、全社で利用しやすいシステムを選びましょう。
クラウド型の勤怠管理システムには、1~3カ月の無料体験を提供しているサービスが多いので使い勝手を試してから契約すると安心です。
5.まとめ
勤怠管理システムを導入すると、決済までの時間を短縮できる、社外からでも申請や承認ができるなど多くのメリットがあります。
ただし、勤怠管理システムをスムーズに導入するには、事前に業務フローを確認し、改善点を洗い出すことが大切です。そのうえで導入環境を整え、自社の目的にあったサービスを選びましょう。
設定漏れや現場への周知不足などによる導入の失敗を防ぐには、実際に勤怠管理を行っている担当者が中心となって、現場の利用しやすさを考慮して進めることが重要です。無料体験などのサービスを活用して慎重に選びましょう。