新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、テレワークの導入企業数は2019年の62万社から2020年には161万社に急増しました。(IDC Japan株式会社の調べによる)
労務管理のルールが整備されないままテレワーク制度がスタートし、勤怠管理に課題を抱える企業は少なくないようです。勤務体系が大きく変わる中で、どのように社員の勤怠管理をするのが良いのでしょうか。
今回は、テレワークの勤怠管理に関する課題を挙げたうえで、考えられる勤怠管理方法、便利な勤怠管理システムについてご紹介します。
目次
1.テレワークの勤怠管理に関する課題
2.テレワークで利用される主な勤怠管理方法
電話
エクセルやスプレッドシート
チャットやメール
Web会議システム
勤怠管理システム
3.長期なら勤怠管理システムの導入が便利
4.テレワークの勤怠管理システムの選び方
ワークスタイルとの適性
スマホ対応
既存システムとの連携
クラウド型かオンプレミス型か
だれもが使いやすいシステムか
無料トライアルがあるか
5.まとめ
1.テレワークの勤怠管理に関する課題
これまでオフィスに出勤するのが当たり前だった企業では、テレワーク導入により、以下のような課題に直面しています。
- 監視の目がなく就業実態が把握できない
- 勤怠報告の集計作業が発生する
- 残業や深夜勤務が増加する
テレワークでは周りに上司や同僚がいないため、勤務時間の把握はできてもその内容まで確認できません。社員の多くは自宅で業務を行うことから、深夜や早朝でなければ集中して仕事ができない人も発生します。
社員の働き方の自由度が高くなる分、社員の評価や管理が難しくなり、従来の就業規則や勤怠管理のやり方では対応できなくなっているのです。
2.テレワークで利用される主な勤怠管理方法
テレワーク導入企業で利用される主な勤怠管理方法5つを、メリット・デメリットを踏まえつつご紹介します。
電話
最も簡便な勤怠管理の方法は、社員の出退社時に管理部や上司へ電話連絡してもらうことです。
連絡する側は1日2回の連絡ですみますが、連絡を受ける側は受け持つ社員の人数分電話を受けて出退社を確認し、記録する必要があります。リモートワークが長期に及ぶと、受け手の負担が大きくなるのが問題です。
エクセルやスプレッドシート
タイムカードを打刻する代わりに、エクセルやスプレッドシートに社員が自ら出退勤時刻を記載する方法もあります。電話と違い受け手の対応が不要になり、管理者の負担は大きく軽減されます。
しかし、本人が自ら時刻を記入するため、虚偽報告や申告漏れが発生しやすいのが課題です。虚偽報告を防ぐには、上司が日報などと照らし合わせ、記載した時刻が正しいか判断しなければなりません。後日、勤務時刻を集計する手間が発生するのもデメリットです。
チャットやメール
グループチャットやメールを活用し、退勤時に業務日報と出退勤時間を報告してもらうと、勤怠管理と業務管理を同時に行えます。業務の進捗や、今後の計画などを報告・相談できるため、テレワークの「コミュニケーション不足」や「評価のしづらさ」の解消にも繋がります。
一方、日報での出退勤時間は自己申告となるため、やはり虚偽が発生する可能性は否めません。勤怠の記録は集計されないため、集計して一覧化するなど別で管理が必要になるでしょう。
Web会議システム
勤務時間中、ZoomなどのWeb会議システムに常時接続し、空間を共有するのも勤怠管理の方法の1つです。社員同士の交流が生まれやすく、コミュニケーション不足による生産性の低下を防げます。勤務時間の虚偽報告が不可能になり、不要な残業の防止にも役立ちます。
しかし、顔や室内の様子が映ることに抵抗を感じる社員もいます。PCに不慣れな社員が多いと、マイクやカメラなどのセットアップ、システムの使い方講習など、事前準備に時間がかかる点もデメリットです。
勤怠管理システム
出退勤時刻や残業、勤務日などを一括で管理できる勤怠管理システムを導入すると、管理作業を効率化でき、コスト削減も目指せます。打刻漏れのアラートや有給管理、チャット、データ共有といった便利な機能が備わっており、テレワーク時の柔軟な働き方に対応しやすくなるでしょう。
システム導入には一定のコストがかかり、準備や周知が必要になりますが、アプリ機能がある勤怠管理システムを選べば、営業や出張など外出が多いスタッフや、パート・アルバイトなどを多く抱えている企業でも利用しやすいのでおすすめです。
3.長期なら勤怠管理システムの導入が便利
勤怠管理システムには様々な機能があり、テレワーク期間が長期に及んでも正確な労働時間の把握が容易になります。
<勤怠管理システムの主な機能>
- 勤務時間の打刻機能(PCやスマホなど)
- 残業や有給休暇の管理機能
- 勤怠情報の自動集計
- 給与計算システムとの連携
- 長時間労働や打刻漏れ、遅刻早退のアラート機能
- シフト管理
- GPSや生体認証を利用した不正打刻防止機能
これらの機能をフル活用すると、集計の手間も不要になり、残業時間や休暇日数もリアルタイムで把握・管理が可能です。テレワークで発生する打刻漏れ・不正申告といった問題の解決や、自己申告や手書きでの勤怠管理を禁ずる働き方改革関連法の遵守にも繋がります。
4.テレワークの勤怠管理システムの選び方
2019年にITトレンドが実施した「勤怠管理システム導入についてのアンケート」によると、勤怠管理システムの導入担当者の90%が「容易に決めすぎた」「もっと検討すればよかった」と回答しています。導入に際しては、自社の目的や予算にあった勤怠管理システムを選ぶことが大切です。
ワークスタイルとの適性
社員の雇用形態や就業スタイル、就業規則に合わせた柔軟な管理ができるか確認しましょう。
正社員、派遣社員、アルバイトなどの雇用形態や、フレックス、裁量労働制といった就業スタイルの違いに応じて簡単にカスタマイズできるかを事前にチェックしておくと安心です。製造業、介護・福祉業といった業界ごとの働き方を考慮した業界特化型のシステムもあります。
スマホ対応
スマホでの打刻・承認ができるシステムだと、より手軽に勤怠管理ができます。
サテライトオフィスでの勤務を認めている場合や直行・直帰する営業が多い場合、自宅にPCのない社員がいる場合は、スマホ対応の勤怠管理システムがおすすめです。ただし、アプリ単体で提供されているサービスだと、簡易的な集計しかできないケースもあるので注意しましょう。
既存システムとの連携
すでに給与管理システムや人事評価システムなどを導入している企業は、データ連携できるシステムを選びましょう。特に給与は勤怠管理データをもとに計算されるので、連携できると手間を大きく省けます。
連携方法には、CSVで出力する、クラウド上でデータを連携するなどさまざまなタイプがあるため、予算と優先度も含めて判断しましょう。
クラウド型かオンプレミス型か
勤怠管理システムには、インターネットを活用したクラウド型と、社内ネットワークを利用するオンプレミス型の2種類があります。
一般的に、クラウド型は自社サーバにシステムを構築しなくて済み、低コスト・短期間で導入できます。対してオンプレミス型は、導入に時間がかかるものの、すべてのデータを自社サーバで管理するのでセキュリティ性やカスタマイズ性が高いのがメリットです。
クラウド型は契約開始・終了が簡単にでき、法令が改正されたときもシステム提供会社がアップデートしてくれる安心感があります。多数の職種や勤務体系が混在し、給与形態が複雑な企業は、カスタマイズしやすいオンプレミス型が適しているでしょう。
だれもが使いやすいシステムか
普段PCを使用しない社員やスマホに不慣れな社員、外国人でも直感的に使いやすいシステムが理想的です。わかりにくいと打刻漏れや問い合わせが増える可能性があり、勤怠管理者やシステム導入担当者の負担が大きくなるでしょう。
無料トライアルがあるか
導入する際は無料体験できるサービスを選び、実際の使い勝手を確かめることが重要です。担当者以外の社員にも使ってもらい、意見を聞くようにしましょう。
使いやすさと一緒に確認したいのが、システム提供会社のサポートの手厚さです。営業担当との相性はもちろん、問い合わせをした時の対応の早さ、丁寧さ、カスタマイズは行ってくれるのかといった点に着目するといいでしょう。
5.まとめ
テレワーク環境下で勤怠管理する方法には、電話やエクセル、チャットなどの活用が考えられますが、虚偽申告や集計の手間といった問題が発生しやすい課題があります。
トラブルを防ぎ、勤怠管理をより手軽に行いたい企業には、勤怠管理システムの導入をおすすめします。システムを選ぶ際には、自社の就業スタイルとの相性や既存システムとの連携性などを確認し、従業員の誰しもが使いやすいものを選びましょう。サポート体制がしっかりしたサービスを選ぶと、導入の不安を減らせます。