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「派遣社員はテレワークできない」は誤解!雇用時の派遣会社の留意点とは

2021.11.24 人事・労務

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、テレワークを導入する企業が増えていますが、正社員だけでなく派遣社員でもテレワークが可能なことをご存知でしょうか。
「派遣社員はテレワークができない」というのは誤った認識で、労働契約への明記などの対策を行えば、派遣スタッフでもテレワークができます。
この記事では、「派遣社員はテレワークできない」といわれる理由をはじめ、派遣社員のテレワーク導入のメリット、厚生労働省が公開した「派遣労働者のテレワークに関するQ&A」の概要について解説します。

目次

「派遣社員はテレワークできない」といわれる理由
派遣社員のテレワーク率は増加している

①契約内容等
②訪問巡回・住所の把握
③苦情処理
④労務管理
⑤同一労働同一賃金
⑥機器の整備等
⑦労働者派遣事業者の内勤社員に係るテレワーク

1.「派遣社員はテレワークできない」は誤解

派遣社員はテレワークが認められない、正社員とのテレワーク率に格差があるといった問題がコロナ禍で浮き彫りになっています。
その原因のひとつに「派遣社員はテレワークできない」という誤った認識がありますが、まずは誤解が生じている理由と、派遣社員のテレワーク率についてみていきましょう。

「派遣社員はテレワークできない」といわれる理由

「派遣社員はテレワークできない」といわれている最も大きな理由は、派遣会社と派遣受け入れ企業の間で結ばれる労働者派遣契約にあります。この契約に「派遣社員がテレワークにより就業する」との明記がない場合、その派遣社員はテレワークができません。
しかし、労働者派遣法に基づき契約変更を行えば、派遣社員であってもテレワークによる就業は可能です。
そのため、もし正社員にテレワークを認め、派遣社員に認めていない場合は、2020年4月から施行された同一労働同一賃金により改善が求められる可能性があります。

派遣社員のテレワーク率は増加している

新型コロナウイルス感染症の影響により、派遣社員にもテレワークが普及しました。
リクルートスタッフィングが2020年6~7月に行ったアンケート調査によると、同社から派遣されたスタッフのテレワーク導入率は、コロナ禍以前の2020年1月末はわずか1%だったのに対し、2020年5月末には48%に拡大しています。
厚生労働省も「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業向け)」を公表して積極的なテレワークの活用を推奨しており、今後も派遣社員のテレワーク移行が続くことが予測されます。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するためには、テレワークが有効な対策の1つであり、派遣労働者についても、派遣先が自ら雇用する労働者と同様に、積極的なテレワークの活用をお願いいたします。
※引用:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)

2.派遣社員のテレワーク導入のメリット

派遣社員のテレワーク導入に二の足を踏む企業もありますが、実施するメリットは少なくありません。派遣スタッフがオフィスを離れて就業する主なメリットは以下の5つです。
・生産性アップ
・離職防止
・イメージアップ
・求人への応募率アップ
・通勤費などのコスト削減
テレワークでは予定外の顧客対応などによる仕事の中断が少なくなり、作業効率が上がります。営業職であれば、直行直帰で客先への訪問回数や時間を増やすことが可能です。
プライベートの時間が確保しやすくなると、ワークライフバランスが実現でき、優秀な人材の離職防止にもつながります。
こうした様々なメリットを打ち出し、企業のイメージアップを図ることができるのもテレワークの恩恵といっていいでしょう。
他にも、育児や介護などを理由に出社が困難な人材や、遠方在住者なども応募対象となるため、求人への応募率アップも期待できます。通勤費やオフィスコストの削減も見逃せません。

3.派遣労働者のテレワークに関するQ&A(厚生労働省)が公開

厚生労働省は「派遣労働者のテレワークに関するQ&A 」を2020年8月26日付で公開、2021年2月4日に更新しています。派遣社員のテレワークに関する契約や労務管理などについて不明点があれば、ぜひ参考にしたい資料です。
この文書では、以下の7項目に沿って、20個のQ&Aが11ページに渡り掲載されています。
①契約内容等
②訪問巡回・住所の把握
③苦情処理
④労務管理
⑤同一労働同一賃金
⑥機器の整備等
⑦労働者派遣事業者の内勤社員に係るテレワーク

4.派遣労働者のテレワークに関するQ&Aの7項目

前章で解説した「派遣労働者のテレワークに関するQ&A」について、7項目の概要をそれぞれ見ていきましょう。

①契約内容等

派遣社員がテレワークを行う際の労働者派遣契約の記載方法が具体例とともに示されています。
派遣社員がテレワークのみで就業する場合や、予定外のテレワークを行う場合など、様々なケースでの契約内容の留意点を確認できます。

②訪問巡回・住所の把握

「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」「派遣先が講ずべき措置に関する指針」では定期的に派遣労働者の就業場所を巡回することとされていますが、テレワークの場合は就業場所が自宅になるため訪問は容易ではありません。
派遣労働者のプライバシーに配慮し、電話やメール、Web上での面談が可能なことや、もし自宅を巡回する場合は本人の同意を得た上で、派遣受け入れ企業が派遣会社から自宅の住所を入手できることなどが記載されています。

③苦情処理

自宅などでテレワークを実施する派遣労働者が苦情を申し出るケースも想定されます。
その場合は電話やメール、Web上での面談も可能で、必ずしも自宅に訪問しなくても良いとしています。派遣受け入れ企業が苦情を受けた場合は、遅滞なく派遣会社に連携することが必要です。

④労務管理

テレワークでは社員の勤務時間を把握しにくい側面がありますが、派遣受け入れ企業は通常勤務と同様、派遣先管理台帳に勤務時間を記載して派遣会社に通知するよう求めています。
※参考:情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン 2(2)イ
テレワーク実施にともない始業・終業時刻に変更があれば、派遣会社は就業規則に記載しましょう。
※参考:テレワークモデル就業規則~作成の手引き~

⑤同一労働同一賃金

同一労働同一賃金が導入され、派遣労働者であるということだけを理由にテレワークが認められない場合は労働者派遣法の趣旨・規定に反する可能性があることが明記されています。
他にも、労使協定方式を採用している場合は、派遣労働者の自宅ではなく「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」で地域指数を選択すること、通勤がなくても通勤手当は実費支給となることなどが解説されています。

⑥機器の整備等

テレワーク用のPCやインターネット環境の準備を派遣労働者に強いるのは望ましくありません。
これらの費用負担や情報セキュリティに関する問題が発生した時の責任の所在については、事前に派遣会社と派遣受け入れ企業で話し合い、労働者派遣契約に規定するよう求めています。

⑦労働者派遣事業者の内勤社員に係るテレワーク

派遣会社に所属する内勤社員が自宅でテレワークを実施する場合、その自宅は事業所に当てはまらないため、新設の届け出を行う必要はありません。

5.まとめ

一般的に広まっている「派遣社員はテレワークできない」という認識は誤解です。派遣会社と派遣受け入れ企業との間で結ばれる労働契約を変更し、テレワークの明記を行えば派遣社員でもテレワークによる就業ができます。
実際、コロナ禍で派遣社員のテレワーク率は増加しているというデータもあり、生産性アップや離職防止、求人への応募率アップといったメリットも見逃せません。
派遣社員のテレワーク実施にあたっては、厚生労働省による「派遣労働者のテレワークに関するQ&A」を確認のうえ、必要な対策をとるようにしましょう。

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