平成24年に改正された労働者派遣法によって、日雇い派遣労働は原則禁止となっていますが、「繁忙期やイベントの時だけ派遣スタッフに来てほしい」という要望をお持ちの企業も多いようです。
ただし「例外」となる条件も定められており、日雇いで派遣社員を雇用できる場合もあるのはご存知でしょうか?
この記事では、日雇い派遣の2つの例外条件と雇用時の注意点について解説します。
目次
1.日雇い派遣の原則禁止とは
2.日雇い派遣の2種類の例外
①日雇い派遣の“業務”が例外の場合
②日雇い派遣労働者の“属性”が例外の場合
3.派遣会社が日雇い派遣を雇用するときに気をつけること
4.まとめ
1.日雇い派遣の原則禁止とは
そもそも日雇い派遣とは、「30日以内」、あるいは「週20時間未満」のいずれかを満たす単発の労働者派遣の仕事を指します。平成24年に労働者派遣法が改正され、この日雇い派遣が原則禁止とされました。
この背景には、日雇い派遣について必要な雇用管理がされておらず派遣労働者の保護ができていないのではないか、不安定な雇用の温床になっているのではないか、といった懸念があります。
厚生労働省の公表している「労働者派遣事業報告(6月1日現在の状況)」によると、平成24年の派遣法改正当時、68,030人いた日雇い派遣労働者は、令和元年に31,000人と半数以下にまで減少しています。
2.日雇い派遣の2種類の例外
日雇い派遣の原則禁止には、2種類の例外が定められており、例外条件を満たせば日雇い派遣スタッフを雇用できます。その条件を見ていきましょう。
①日雇い派遣の“業務”が例外の場合
1つめの例外事由は「業務」です。下記の業務については、適正な雇用管理に支障を及ぼす恐れがないとして認められています。どの仕事も専門性が高く、日雇いでも常にニーズがあることが理由として挙げられるでしょう。
- ・ソフトウェア開発
- ・機械設計
- ・事務用機器操作
- ・通訳、翻訳、速記
- ・秘書
- ・ファイリング
- ・調査
- ・財務処理
- ・取引文書作成
- ・デモンストレーション
- ・添乗
- ・受付・案内
- ・研究開発
- ・事業の実施体制の企画、立案
- ・書籍等の制作・編集
- ・広告デザイン
- ・OAインストラクション
- ・セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
※引用:厚生労働省「日雇派遣の原則禁止について」
②日雇い派遣労働者の“属性”が例外の場合
2つめの例外事由は、派遣スタッフの「属性」です。日雇い派遣労働者が、次のいずれかに当てはまる場合も例外として認められます。
- ・60歳以上の者
- ・雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる「昼間学生」)
- ・副業として従事する者(生業収入が500万円以上の者に限る。)
- ・主たる生計者以外の者(世帯収入が500万円以上の者に限る。)
「満」60歳以上の方は、一般的に雇用機会の確保が難しいとされ、例外に含まれます。
昼間は大学や専門学校に通い、休日や夜間に働く場合にも日雇い派遣が認められています。ただし、夜間学部や定時制、通信教育、資格学校などに通っている学生や休学中の場合は含まれません。
生業収入(最も多い収入)が500万円以上あれば、副業として日雇い派遣で働けますが、複数の収入源を合わせて500万円以上の場合は、例外事由に当てはまらないため注意が必要です。
収入がなくても、主たる生計者(その世帯で最も収入が多い人)に該当しない者で、世帯年収が500万円以上あるケースでは日雇い派遣が可能です。
3.派遣会社が日雇い派遣を雇用するときに気をつけること
日雇い派遣には「例外条件」の他にも、雇用する際に迷いやすいルールがいくつかあります。違反が判明すれば指導や業務停止などの恐れがあるため、契約を結ぶときは次の4点に気をつけましょう。
身分証や年収確認書類を事前に確認する
前章で解説した日雇い派遣原則禁止の例外要件を満たしているかどうか、身分証や年収確認書類で事前に確認しましょう。
年収確認書類は、「源泉徴収票」「課税(非課税)証明書」「確定申告書」など、今年の見込みではなく前年の収入が記載されているものでなくてはなりません。
派遣受入企業の状況を確認する
厚生労働省は「日雇派遣労働者の雇用の安定等を図るために派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針」において、派遣会社による派遣受け入れ企業の就業状況確認を求めています。
派遣会社が適正に対応していても、派遣受け入れ企業の就業状況が契約内容と異なる場合には、派遣労働者に負担が生じる可能性があります。
指針では、派遣会社は派遣受け入れ企業を定期的に巡回すること、連絡調整を行うことなどによって、労働者派遣契約を違反していないか確認することとしています。
労働・社会保険の適用を促す
先ほどの指針では、日雇い派遣労働者を守るために、派遣会社に対して労働・社会保険の適用も促しています。不安定な雇用状態にある日雇い派遣にとって、安心して働けるひとつの材料となるでしょう。
教育訓練を行う
職業能力開発促進法および労働者派遣法(第30条の4)に基づき、派遣会社は派遣労働者の職業能力開発のため、教育訓練を実施する義務があります。
しかし、厚生労働省委託「労働者派遣法施行状況調査(令和元年度実施)」によると、派遣会社による教育研修の実施状況は、雇用期間1カ月超の派遣労働者対象では97.5%が行われているのに対して、日雇い派遣労働者対象では90.0%でした。
教育訓練は日雇い派遣労働者も対象となっていますが、現状では実態が法律に追い付いていない状況にあります。
4.まとめ
「30日以内の期間」あるいは「週20時間未満」を定めて雇用する日雇い派遣は、労働者派遣法により原則禁止されています。
しかし、専門性の高いソフトウェア開発、財務処理といった18の業務にあたる場合や、満60歳以上などの属性に当てはまる場合は「例外」と見なされ、日雇い派遣を雇用することができます。
日雇い派遣を雇用する際は、身分証などで例外条件に当てはまるか事前に確認し、適切な雇用措置をとるようにしましょう。