人材不足が深刻になりつつある昨今、「人材派遣」を検討する企業は多いのではないでしょうか。
ただ、派遣社員の受け入れは、労働者派遣法の遵守や派遣スタッフの管理などが必須であり、担当者は法令の知識や派遣業務への理解が必要です。
そこでこの記事では、初めて派遣社員を受け入れる企業の人事担当者にむけて、人材派遣の種類とそれぞれの特徴、派遣社員を採用する(受け入れる)ときの流れ、注意点などについて解説します。基本を押さえてスムーズに派遣社員を迎えましょう。
目次
1.派遣社員を採用する(受け入れる)ときの流れとポイント
①派遣会社に条件を伝えて依頼する
②派遣会社から紹介連絡を受ける
③派遣予定人材の顔合わせ・スキル確認を行う
④派遣契約と受け入れ準備を行う
2.材派遣の種類も確認しておこう
登録型派遣(有期雇用派遣)
常用型派遣(無期雇用派遣)
紹介予定派遣
3.派遣社員の採用(受け入れ)では法令遵守に注意
通常派遣は面接できない
3年ルールを考慮する
派遣社員にはできない業務がある
正社員と平等に扱う
4.まとめ
1.派遣社員を採用する(受け入れる)ときの流れとポイント
さっそく派遣社員を受け入れるときの基本的な流れとポイントを解説します。4ステップに分けて見ていきましょう。
①派遣会社に条件を伝えて依頼する
派遣社員の受け入れを決めたら、派遣会社に希望や条件を伝えて人材を依頼しましょう。依頼時に伝えるべきポイントは、主に以下の4つです。
・募集背景
・就業の開始時期と期間
・シフトや就業時間などの就業条件
・実務経験やスキル、資格などの希望
聞いていた業務内容と違うなどのミスマッチは、派遣スタッフが辞める主な原因のひとつになります。できるだけ丁寧に派遣元の担当者とすり合わせを行うことが大切です。また、性別や年齢の制限は法令により禁止されているので注意しましょう。
②派遣会社から紹介連絡を受ける
派遣会社に伝えた希望条件をもとに、スキルや就業条件などが合う候補者について連絡が入ります。内容を確認したうえで返答しましょう。
ただし、紹介予定派遣を除き、受け入れ企業側で派遣社員の履歴書や経歴書の閲覧、面接で選考を行うことは労働者派遣法によって禁止されていますので、採用(受け入れ)に関わる確認はすべて派遣会社を通すことになります。
③派遣予定人材の顔合わせ・スキル確認を行う
前述の通り、紹介予定派遣以外の派遣形態では事前面談による選考は違法にあたりますが、派遣会社の担当者同行のもとに、職場見学やスキル確認の顔合わせは実施できます。
その際、著しく条件に合わない場合は派遣会社に相談して同意が得られれば、採用(受け入れ)を見送ることも可能です。反対に派遣社員側が派遣会社を通じて断るケースもありますので、顔合わせはコミュニケーションも大切です。
④派遣契約と受け入れ準備を行う
派遣社員の決定後、派遣会社と契約を締結します。受け入れがスムーズに行えるよう、事前に社内へ周知し、就業までの間に業務に必要なパソコンや社内システム、依頼予定の業務マニュアルなどの準備を行い、勤務環境を整えておきましょう。
2.人材派遣の種類も確認しておこう
派遣は登録型、常用型、紹介予定の3種類があり、派遣可能期間や事前面談の有無、社員登用義務など、契約条件が異なります。それぞれの仕組みを理解して、条件に合う派遣依頼を行いましょう。
登録型派遣(有期雇用派遣)
有期雇用派遣とも呼ばれる登録型派遣は、最も一般的な派遣システムです。人材は派遣元の会社と期間限定の雇用契約を結び、受け入れ企業に派遣される形となります。
派遣元会社が雇用主となるため、受け入れ企業側は採用可否を決める目的の事前面談は行えません。また、労働者派遣法により派遣可能期間は最長3年までと定められています。
常用型派遣(無期雇用派遣)
常用型派遣とは、派遣元会社が社員として常時雇用している人材を出向の形で受け入れ企業に派遣するものです。無期雇用派遣とも呼ばれ、派遣可能期間の3年制限に縛られないため長期勤務が可能となります。
常用型派遣は専門性を有した人材が特徴です。研究機関をはじめ、情報技術やメーカーの開発部門、設備の工事管理、生産管理など技術系を中心に活躍しています。理系分野のほか、経理、人事、販売、介護など各種分野に特化した派遣会社もあります。
紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、将来的に受け入れ企業が直接雇用することを前提とする派遣契約です。派遣期間は最大6ヵ月となっており、一定期間派遣として働いた後、派遣元と受け入れ企業の合意のもとで雇用が切り替えられます。
この紹介予定派遣に限り、受け入れ企業の事前面談が認められています。また、直接雇用にする際に派遣会社への紹介手数料が発生します。
3.派遣社員の採用(受け入れ)では法令遵守に注意
派遣社員は労働者派遣法で守られているため、受け入れ企業側は法令遵守が求められます。最後に、受け入れに当たって注意すべきポイントを確認しておきましょう。
通常派遣は面接できない
紹介予定派遣の社員以外は、労働者派遣法第26条6項により受け入れ企業による選考面接は禁止されています。顔合わせは実施できますが、基本的に迎え入れることが前提となっています。
そのため、派遣会社への依頼時に、希望する人材の条件を細かく伝えておくことが大切です。また、面接以外にも以下の選考行為が禁止されているので覚えておきましょう。
- ・履歴書・職務経歴書による選考
- ・適性検査による選考
- ・年齢・性別による選考
3年ルールを考慮する
一般的な有期雇用の派遣社員には、「派遣の3年ルール」と呼ばれる派遣可能期間の制限が設けられています。
派遣社員が同一部署で勤務できる期間は最大3年まで、また、同じ派遣会社から人材を受け入れられる期間も3年までと定められています。勤務3年に満たない派遣社員でも、派遣元との期限がくれば契約終了となるので要注意です。
派遣社員が60歳を過ぎている場合などは例外や延長もありますが、事前に手続きが必要です。常に3年ルールを念頭に置き、必要に応じて準備をしておきましょう。
派遣社員にはできない業務がある
労働者派遣法により派遣社員には適用除外業務が定められており、以下の業務は禁止されていますので把握しておきましょう。
- ・港湾運送業務
- ・建築業務
- ・警備業務
- ・医療業務
- ・士業(弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士、管理建築士など)
上記の関連業務でも事務員やCADオペレーター、施工管理業務などの直接業務以外であれば派遣も可能です。また、看護師の紹介予定派遣や産休の欠員補充にも派遣が認められています。
もし禁止業務に就かせた場合は、派遣元の会社だけでなく派遣受け入れ企業も刑罰に問われる可能性があります。業務内容は派遣の依頼前に精査・確認することが重要です。
正社員と平等に扱う
2020年4月1日に「同一労働同一賃金」が施行され、派遣元の違いによる賃金格差や正社員との待遇格差を無くす取り組みが始まりました。福利厚生や休日取得なども含めて、可能な限り正社員と平等な体制を整えましょう。
また、差別やいじめは、派遣社員が辞める原因として最も多く聞かれるものです。同じ会社に勤務する仲間として平等に扱うべきであると事前に周知しましょう。早めに業務や職場環境に慣れるように、社内ルール勉強会や業務研修を行うことも大切です。
4.まとめ
派遣社員を受け入れる流れは、まず派遣会社に対して具体的な希望条件を伝えることから始まります。その後、紹介、顔合わせと進みますが、法令により受け入れ企業側では、選考に関わる面談や書類の閲覧は禁じられています。依頼時に丁寧に条件や環境を伝えるのがポイントです。
また、派遣には登録型派遣・常用型派遣・紹介予定派遣という3種類があるため、初めて派遣スタッフを迎え入れる前にそれぞれの違いを理解することも重要です。
派遣社員の受け入れでは労働者派遣法を遵守し、面接不可、3年ルール、禁止業務、同一労働同一賃金を押さえて、法令違反に注意しましょう。